価格カルテルと被害の回復


 最近、公正取引委員会による価格カルテル事件に対する排除命令をよく見るようになりました。
 価格カルテルにおいては、事業者が意思の連絡のもとに販売価格の値上げをする事例が典型例です。
 この価格カルテル公正取引委員会によって認定された場合、公取委はこれらの事業者に対してカルテル合意の取りやめである排除措置命令を科し、且つ一定割合の課徴金納付命令を科します。
 この課徴金は、国庫への納付となり、決して被害者への被害弁済にはあてられません。そうすると、カルテルにより高い価格で商品やサービスを購入した事業者や消費者は、その被害を回復されないままの状態となり、その被害の回復は被害者の自己責任の問題となってしまいます。
 価格カルテルという独禁法違反行為によって被害を被った事業者や消費者は、多数に及ぶものの、その個々の被害額は少額なものかもしれません。また、このような被害者である事業者や消費者は、被害者意識が乏しいかもしれません。さらに、被害者としての事業者や消費者は、カルテル事業者に対して損害の賠償を請求したり訴訟を提起したりすることが、事業者にあっては取引の関係上憚られることがあり、又、消費者においては訴訟へのアクセスの方法等もなく費用もかかり避けようとするかもしれません。
 しかし、多数の少額の被害も集まれば大きな額となるものであり、その分配のルールが明示され、訴訟へのアクセスも確保されるものであれば、カルテル被害者の集団訴訟として損害賠償請求をすることは、被害の回復を実現し、且つ企業の独禁法コンプライアンスを具現するとの見地からも十分意味のあるものと考えられます。