差止訴訟への文書提出命令の特則の導入


独占禁止法の本年度の改正の目玉は、課徴金の適用範囲の拡大、罰則の強化、企業結合規制の改正等と思われますが、地味なところとしては、独禁法に基づく差止請求訴訟に文書提出命令の特則が導入された点が注目されます。
独禁法に基づく差止請求については、当事務所でも何度かトライしていますが、訴訟ではなかなか認容判決が出ず、示談交渉においてこの差止請求を前提とした解決が図られている事案が存する状況です。
訴訟においてこの差止請求を行使する場合には、相手方の不公正な取引方法を立証することが困難な場合が多く、その場合相手方の手持ち証拠をどのように裁判所に提出させるかが難しいことは実務上よく経験するところです。
今回の独禁法の改正によって、新第83条の4は差止請求訴訟に文書提出命令の特則を導入し、裁判所のイン・カメラ手続を規定し、さらに新第83条の5では秘密保持命令を規定しています。
独占禁止法に基づく差止請求訴訟は、平成13年に施行後8年間未だ一件の認容判決も出ていないといわれているだけに、この文書提出命令の特則の導入によって差止請求訴訟が認められ、被害者が独占禁止法に基づいて直接救済されることを期待いたします。